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大学は出たけれどー延々と司法試験に受からない「白あり公務員」

 「ぼく明治大学を出たんですけど・・・」

 若いときの無理がたたって、リハビリに病院、接骨院に行くことが多い。病院では理学療法士(以下、PTと略す)、接骨院では接骨医の若手が相手である。20歳代が多いが、中には30歳ぐらいの人たちも混ざっている。とくにPTでは補助員におじさんが混じっている。気になるので聞いてみる。その答えが「明治」である。昼は補助員をやりながら、夜にPTの専門学校(4年制)に通っているそうだ。もう一人の補助員は法政の卒業生である。

 就職氷河期に卒業後したが、何とか就職できた。しかし、サラリーマンをやっているうちに「これが天職か」と悩み、一人はオーストラリアに語学留学までしたそうだ。そのうちにPTという仕事を知り、「人助けになる」と思ったらしい。

 しかし、今はPT、接骨も国家試験の合格率が9割近いが、最近では専門学校の学生が不景気とともに増え、合格率が激減するはずである。ましてや年間授業料が100万円以上もかかり、病院で補助員を毎日しても、生活するのが大変である。それでもサラリーマンを辞め、PT、接骨の国家試験を目指す人が増えている。

 しかし、いったん国家試験に受かりさえすれば、仕事、待遇は保証される。リストラにあうことはまずない。手に職をつけることとしてPT、接骨が一つの有力な選択肢である。サブプライム、リーマンショックが連発し、身も心も、そして財布の中身もさびしくなるご時勢に、あえて補助員として夜学に通う明治、法政の卒業生にエールを送りたい。

 一方、私たちが税金で養っている渋谷区の単労(単純労務職。清掃、警備、用務等。08年4月1日現在、539人。23区の中でも圧倒的に多い。年収と退職金、年金の住民負担分は一人約1000万円。65歳までの再就職を入れると、単労は600人を遥かに超える)

 この中に警備員として26人いる。大半は中央大学法学部卒業である。高卒が大半の単労の中では、すこぶる高学歴である。実は昔、司法試験を目指していた「成れの果て」である。夜警をしながら、昼は受験勉強をしていたが、余りにも試験に受からず、多くは諦めるか、惰性で受験を続けている。

 普通、東大卒は卒業後3年、早慶卒は5年、中大卒は10年かけないと司法試験は受からないといわれている。しかし、中大卒の警備はこの10年の間に「白あり公務員」の美味しさ、楽さにどっぷり浸かってしまい、受験勉強をまともにしなくなる。ここ20~30年間、渋谷区役所の夜警で司法試験に受かったのはたった一人だそうだ。それもまだ20歳代の若者だったそうだ。

 警備の人たちは、人間的には良質である。ぼくが知っている笹塚小学校の夜警は優しく、気持ちのいい人だった。でも60歳近くになっても、司法試験合格をまだまだ目指している。そして、いまだに独身である。しかし、残念ながら合格の可能性は限りなく0に近い。だって、リハビリ病院で昼は補助員、夜は専門学校に通っている明大、法大卒の気迫を感じないから。

 大学の非常勤講師もいる夜警の人たちを見ながら「蛇の生殺し」だと思う。なんだ、かんだと年間1000万円近くを貰い、それに甘んじ、気が付いたら司法試験に受からないまま60歳である。これが人の人生か?

 でも、もうそんな人生はもうありえない。失業率はすぐに5%を超え、大学を出ても就職できない人が以前よりも目立つ。大学院を出ても「高学歴ワーキングプア」が一人増えるだけである。大学進学率80%を超える韓国ほどはひどくはないけど、日本でも「秋葉原大虐殺」「厚生事務次官殺人事件」のようなことが多発するだろう。犯人はかっての秀才である。

 「大学は出たけれど」は、戦前の小津映画の題名である。しかし、何かの資格も取らない限り、これから生活できなくなる。司法試験に受からないまま定年を迎える「白あり公務員」はもはや「絶滅危惧種」である。

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